道具を見ればわかる

エッセイ




Kim Studio(東京・南青山)



陶芸家であり、料理家・美食家としても知られる
北大路魯山人(きたおうじ ろざんじん)の話です。

魯山人は、鰹節削りを見て、
刃の切れ具合で、その家の料理がわかる
と言ったそうです。

道具を見れば、それで全てがわかるのでしょう。


それは、私の仕事にも同じ事が言えます。

スタジオには、マイクを立ち上げるケーブルや
機材同士をつなぐパッチ・ケーブルと呼ばれる配線材があります。

それらが、整理されているか、プラグが美しく磨かれているか、
それを一目見れば、そのスタジオの音が良いかどうか
直ぐに分かります。

不思議なくらい、これは当たっています。



どんなに豪華なスタジオであろうが、
立派な建物のホールであろうが、
パッチケーブルのプラグが曇っているようなところで
美しい音や、素晴らしい音楽を聴いた試しはありません。

逆に、どんなに古い建物でも、
どんなに小さなところでも、
プラグがピカピカに磨かれ、
長さや種類によって整理されているスタジオでは、
美しい音や感動する音楽を聴くことがあります。

パッチ・ケーブルを見ただけで、
道具を見ただけで、
スタジオのクオリティーがわかる、
音楽の質までわかってしまうのです。

寄稿:
伊藤 圭一(いとう けいいち)
サウンドエンジニア&プロデューサー、Kim Studio主宰、(株)ケイ・アイ・エム代表。音を自在に操りヒット作を作り出す「音の魔術師」。斬新なアイディアと先見の明により多くの企業や組織、音楽家を成功に導く、エンタメ界の影の仕掛け人。音響メーカー顧問、洗足学園音楽大学教授、公益財団の理事、著書『歌は録音でキマる! 音の魔術師が明かすボーカル・レコーディングの秘密』

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