プロデューサーは環境を作る

エッセイ





私の仕事、音楽プロデュースという仕事は、
アーティストのために、その環境を作ることだと
思っています。

音楽家やミュージシャンは、得意な環境を用意してあげると、
まさに水を得た魚のように、活き活きと輝きだします。

私が用意する環境とは、

やり甲斐のある仕事を目の前に用意することであったり、
訓練するための課題を出すことだったり、
また、それを行うための場所や時間を提供することだったり。

しかし、誰もが
好きなことで勝負できるとは限りません。

人気があるポジションは、当然、競争が激しく
簡単には、手に入りません。

ソロ・プレーヤーの座が、まさにそうです。

ステージの真ん中に立ち、スポットライトを浴びる。
それは、至極の喜びでしょうが、
その座を手に入れることは、至難の業です。




ちょっと視点を変えて、
伴奏役はどうでしょうか?

たとえば、ピアニスト。
非常にたくさんいらっしゃいます。
しかし、伴奏役を的確にこなせる人は、非常に少ないです。
あまりおりません。

それは、みんなが、ソリストを目指すからでしょう。
歌や、ソロ楽器の伴奏が上手なピアニストは、本当に少なく、
ソロ・ピアニストよりも、貴重であり、
私たちプロデューサーは、上手い伴奏ができるピアニストを
常に探しているくらいです。




おそらくこの現象は、
音楽の業界だけのことではないでしょう。

ソリストやスター・プレーヤーに向いている人もいますが、
伴奏役やサポート役が適任の人も多いはずなのです。

自分がソリスト向きなのか、サポート役に向いているのか、
改めて冷静に考えてみるのもいいと思います。

ソリストに課せられた重責は、大きいです。
それから、ソリストは、比較的短命です。
その座をキープし続けることは、非常に困難です。

一方で、それを支える人は、どうでしょう。
高い技術が要求される割には、
比較的目立たない存在です。

ですから、とても不足しているのです。
スターのように、飽きられることがありませんから、
長く活躍することもできます。

それでも、みな、ソリストを目指します。

それが夢なのは、理解できます。
ですが、果たしてそれが、ベストなのでしょうか?

あなたは、どちらのタイプですか?

それでも、あなたは、ソロ・プレーヤーを目指しますか?




寄稿:
伊藤 圭一(いとう けいいち)
サウンドエンジニア&プロデューサー、Kim Studio主宰、(株)ケイ・アイ・エム代表。音を自在に操りヒット作を作り出す「音の魔術師」。斬新なアイディアと先見の明により多くの企業や組織、音楽家を成功に導く、エンタメ界の影の仕掛け人。音響メーカー顧問、洗足学園音楽大学教授、公益財団の理事、著書『歌は録音でキマる! 音の魔術師が明かすボーカル・レコーディングの秘密』

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