音が悪すぎます(ナースコール)

エッセイ





先日、病院にお見舞いに行った時のことです。

その病院は、最近建てられたという大きく立派な病院でした。

建物は美しく、設備も最新のものでした。

しかし、
病室からナース・コールをしたときに
呼び返してくれる看護婦さんの声に驚きました。


音があまりにも悪すぎる のです。

看護婦さんの言葉ではありません。
スピーカーから聞こえてくる音質が悪すぎるのです。

そこだけは、まるで昭和の時代を感じさせるような音でした。



よく観察してみると、インターフォンと同じ構造で、
マイクとスピーカーが一体になっていて
それが小さなプラスチックの箱に収められていました。

大きな音がすると、そのプラスチック・ケースが響いて
音とともにビリビリと振動しています。

スピーカーやマイクなどの
音響機材なんて、
医療設備に比べたら、桁違いに安いものです。

建物の立派さを考慮しても、
そこで費用を削らなければならないようなことは無いはずです。
それなのに、どうして・・・という疑問が湧きました。


おそらく、
ただ単に、音に無頓着なだけなのでしょう。


目に見えるものは、
誰の目にも、その立派さがわかりますから
簡単に判断ができますし、
質の違いが比較的、明確にわかるものです。

しかし、
音の善し悪しとか、音質ということになると
目には見えないので、その重要性が理解されにくい のです。






スピーカーの音は、
おそらく、ナースセンター側も
同様に、音が悪いと予測されます。

仕事で、沢山の患者さんからのメッセージを聞くわけです。
場合によっては、
とても大切な、命に関わる叫びを届ける
マイクやスピーカーです。

せめてクリアーで聞きやすい音で
聞かせてあげたいものです。

寄稿:
伊藤 圭一(いとう けいいち)
サウンドエンジニア&プロデューサー、Kim Studio主宰、(株)ケイ・アイ・エム代表。音を自在に操りヒット作を作り出す「音の魔術師」。斬新なアイディアと先見の明により多くの企業や組織、音楽家を成功に導く、エンタメ界の影の仕掛け人。音響メーカー顧問、洗足学園音楽大学教授、公益財団の理事、著書『歌は録音でキマる! 音の魔術師が明かすボーカル・レコーディングの秘密』

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